映画紹介ルポMovie Holic第四回『リリーのすべて』

2つの女性像

皆さんは自分のお母さんを不思議な女性だと感じたことはありませんか?普段は厳しく優しく頼りになる女性なのだけれど、綺麗なものを見た時、おしゃれをしてる時、甘いスイーツを食べてる時。そんな時、どこか少女みたいなテンションが垣間見える時があるのではないでしょうか。男性がいくつになっても少年のような心を忘れないように、一人の女性の中には、少女のような感性がある気がします。

作中では、そういった女性の両極面が、ゲルダとリリーを通して克明に描き出されていました。ゲルダは愛情深い母のような強さと度量を持ち合わせた女性であり、リリーはキラキラとした心を持ち美しいものに興味が尽きない少女のような女性です。ゲルダとリリーの関係も、母娘のように寄り添ったものとなっており、リリーがゲルダ母さん(笑)に反発している場面もあるくらい。これまで、どちらか片方を強調した小説や映画は数多くあれど、その両面を描き出している作品は少ないのではないでしょうか。また、社会でまかり通っていたジェンダー観から脱却したリリーですが、その内面は、当時から今でも変わらない「女性らしさ」をかなり強烈に追い求めていたことも強く印象に残りました。

絵画

画家であるアイナは、絵画を通して自分の感性を描いていました。その魅力は、彼の生まれ育ったオランダで高い評価を得るほど。しかし逆に、リリーは全く絵画を描きません。絵画を描かなくなった代わりに、彼女の魅力は彼女自身から溢れ出し、あらゆる男性を惹きつけます。そのようなアイナとリリーの関係を見ていると、リリーの感性は、最初からアイナの絵の中に生きていたような気もします。しかし、あまりにも絵画とアイナの関係が強すぎたために、アイナから完全に独立したいリリーは、絵画を頑なに拒んだのでしょう。
対して、それまで鳴かず飛ばずだったゲルダの絵画は、リリーを描いた途端に大変高い評価を得るようになりました。もしかしたら、リリーの女性としての美しさだけでなく、一筆一筆の中にゲルダの愛情や不安などが込められていたからこそ、一気に人を惹きつける魅力を出していたのかもしれませんね。そして、ゲルダに描かれるようになってから、描くごとに益々美しくなっていくリリー。そんな彼女を見ていて、絵画を描くことは拒んでも、絵画のような美しさを無意識に追及しているように思えてなりませんでした。

スカーフ

アイナが冗談で女装を試みた時から、リリーが死んでしまう最期の時まで、彼、または彼女が女性らしい服装をする時は、常にスカーフを身に着けていました。これはつまりスカーフが極めて女性らしさを象徴するアイテムだったということ。特に一番最後のシーンでも、リリーが身に着けていたスカーフが風に飛ばされ天に舞う表現で物語が締めくくられます。なぜスカーフがリリーという女性の象徴だったのか、そのことについて調べたところ、かの有名なエルメスが一枚噛んでいたことが分かりました。

この映画は、20世紀前半が舞台となっている作品です。そして、現実世界で20世紀前半に起きていたファッションブームこそが、女性のスカーフの着用でした。本来、スカーフは18世紀頃の兵士が着用していたもので、今のネクタイの前進となるものでした。つまり、元は男性用のアクセサリー。それを、20世紀に入り、エルメス社が女性向けのアクセサリーとして展開し始め、一躍ヒット。当時の女性からしたら、スカーフを身にまとうことが最先端のファッションだったわけです。さて、リリーは美しいものが好き、おしゃれが好き、より女性らしくありたい、そんな女性でしたね。そんなリリーがスカーフを身に纏わない理由はなかったでしょう。だって、当時の女性らしさの象徴でしたもの。だからこそ、常にスカーフを身に纏うおしゃれ女子として、リリーとスカーフが密接な関連を持っていたのでしょう。

今回はアツく語ってしまったMovie Holic。次回はもっとコンパクトに読みやすくできるかな??!今回はこれだけ語れる程魅力のぎっしり詰まった作品だったということで。少しでもその魅力を伝えることができていたなら幸いです(*´▽`*)ではまた!See you~

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hiyori • 2016年9月20日


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