先月半ばまで上野で行われていたポール・スミス展。男女問わず、様々な人々の興味を惹きつけ大成功を収めました。一時期、大きな黄色の付箋とピンクのスタンドライトが映っている写真を、SNSでしょっちゅう見かけた人もいるのではないでしょうか。
今回、美術館内の壁や広告、看板、チケットと、ピンク色が非常に目を引いたポール・スミス展でしたが、ブルーやブラックも特徴とされるポール・スミスは、なぜピンクを全面に押し出していたのでしょうか。それにはちゃんと理由があったんです。今回、ポール・スミス六本木店で行われるパーティーも迫りつつある今だからこそ、今一度ポール・スミス展で個人的に感じたことを振り返ってみようと思います。
ポール・スミスに見られるピンクへのイメージ
ポール・スミス展に足を運んでみて真っ先に思ったことは、広告でのイメージを裏切らないテーマ色でした。広告はもちろん、内装や配布されたイヤホンがピンク。確かに、ポール・スミスというブランドでは、ヴィヴィッドだけれど優しい雰囲気のある、独特なピンクカラーが使われています。だけど、ブルーやブラックも人気だしポール・スミスを代表するような特徴的なカラーじゃない?どうしてピンクをテーマカラーにしたのでしょう?
その本質を追求する前に、まずはポール・スミス社とピンクの関係からお話ししましょう。まず、ポール・スミス社自体では、2004年から、コレクションライン「ポール・スミス ブルー」、テーラリングラインの「ポール・スミス ブラック」、カジュアルラインの「ポール・スミス ピンク」の3つのレーベルが展開されました。
これらは、2008年にはメンズのメインラインの「ポール・スミス」、「ポール・スミス ブラック」、大人向けカジュアルライン「ポール バイ ポール・スミス」として新たな門出を迎えています。ここでは、レーベルの名は変わったものの、ピンクがカジュアルなイメージと色濃く結びついているのが分かります。
ピンクは「幸せの色」
そして、何といってもポール・スミス氏のピンクへのイメージと今回の「ポール。スミス展」。ポール・スミス氏自身は、ピンクを幸せの色と仰っています。そのポール氏が関わったポール・スミス展。彼は、この展覧会を通して、若い世代のクリエイティブな職業を目指す人々へ向けて、彼らの夢を後押しするためのエールを、彼の人生の歩みを通して伝えとようとしていました。現在の自分から遠いように思える大きな夢も、「小さなことから初めて徐々に大きくしていけばいい」と、実際に自分がそうだったと伝えているのです。
だからこそ、メインゲストである若い世代のイメージカラーであり、敷居の高さを感じさせないカジュアルな色であり、幸せの色でもある「ピンク」をメインカラーとして扱っていたのではないでしょうか。ただコレクションを並べるのみの展覧会でなく、ポール・スミス氏がいる環境をありあり真正面から展示した展覧会、ポール・スミス展。”HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH”という題名からも察する通り、ポール・スミス氏の頭の中や人生を徹底解剖するような展覧会でした。
今回、ポール・スミス展を見に行った私たち来場者にとって、メインゲストはポール・スミス氏自身でした。しかし、見方を変えると、真のメインゲストは、これからの未来溢れる若い世代や、夢を目指すクリエイターの卵な方々だったのかもしれません。