アウティングとは何か 「同性愛を暴露され転落死」の事件から考える

8月5日、同性愛者であることを同級生に暴露され自殺した一橋大学法科大学院の学生をめぐる裁判の初公判が行われ、テレビやインターネットでも広く報じられた。自殺した男子学生は4月に同級生の男子学生に好意を打ち明け、交際を断られていた。しかしその後、打ち明けられた男子学生がLINEグループなどを中心に彼がLGBTであることを暴露(アウティング)してしまい、大学にも通えない状態になっていたという。

関連:LGBTって何?

“アウティング”とは?

A strong message
相談を受けた大学側の無理解極まる対応なども問題ではあるが、今回の事件における最も大きな問題は「アウティング」だろう。アウティングとは、一般的に本人が望まない形や場、相手への暴露を指す。特にLGBTに関して言えば、自らの意図しないところでセクシュアリティや性自認、またはそれに関わる情報をバラされてしまうことを言う。

今回のケースでは、好意を告げられた側の男子学生は「おれもうおまえがゲイであることを隠しておくのムリだ。ごめん」と投稿を行ったとされているが、このようにハッキリと暴露する形でなくてもアウティングが行われてしまうことはある。

筆者がよく見るケースでは、「(LGBT当事者に向かって)他にもLGBTの友達がいるから大丈夫だよ! ××さんとか」と、友達を紹介する感覚でセクシュアリティを暴露してしまったり、「あの人、(男or女)に見えるけど、実は違うんだよ」と、本人の戸籍上の性別を教えてしまったりといった場合が挙げられる。こうした小さなアウティングは意外と日常の中に潜んでいて、思わぬタイミングで人間関係を壊してしまうこともある。

“アウティング”をしないためには

cd11ebbe57104ae7ee3cc14e5cc2c7ba_s
今回の事件の報道を受けて「アウティング」や「暴露」について考える機会を持った方もいるかもしれない。

セクシュアリティに限らず、意図的に誰かの秘密を暴露することは論外だが、無意識のうちにアウティングを行わないために今日から気を配れることをいくつか紹介しておこう。LGBTの友人がいる、という人は勿論、今は身の回りにいるかどうかわからないという人も、ぜひ目を通してもらいたい。

1. 知り合いに当事者がいる場合、オープンなのかクローゼット(秘密)にしているのか知っておく

自らがLGBTであることを隠さずに生活することを「オープンにする」という。対して自らのセクシュアリティを秘密にすることを「クローゼット」と呼ぶ。

勿論、相手がセクシュアリティをオープンにしているからといって、誰にでも、どんな場でも言いふらしていい、というわけではない。オープンな当事者にも、知られたくない相手や公開されたくない場はある。

とはいえ、相手が誰に自らのセクシュアリティを伝えているのか、知られたくない相手は誰か、ということは確認しておいた方が良い。特にあなたが、LGBT当事者から相談を受けた際などには確認は必須だ。知らなければ、相手を助けるつもりでアウティングを行ってしまうこともあるからだ。

2. 人のセクシュアリティについて言及しない。聞かれたとしてもぼかして答える

あまり具体的なアドバイスには見えないかもしれないが、実際のところ、これに尽きる。これは相手がLGBT当事者であろうとなかろうと同じことだ。

そもそも人のセクシュアリティや性自認は目に見えない。あなたがヘテロセクシュアル(異性愛者)だと思っている人も、本当はゲイやバイセクシュアルかもしれない。だから、本当はあなたが誰かのセクシュアリティを勝手に他人に告げることそれ自体が間違いなのだ。

とはいえ、詮索好きな誰かに尋ねられることもあるだろう。その際に「知らない」と言えるかどうかが、あなたが友人を守れるかどうかの境目かもしれない。

3. 相手のことをどこかで話す時は、必ず「どこまで言っていいか」を確認する

たとえばあなたが職場や学校で「LGBTの知り合い」について話す時、個人が特定できる情報は出さないことは前提として、相手には必ず「どんな情報までなら伝えて良いか」を確認する必要がある。

年齢と住んでいる街までなら大丈夫、という人もいるかもしれないし、職業は話に出してほしくないだとか、出身地は知られたくない、具体的なセクシュアリティは話してほしくない、など、人それぞれに知られたくない事柄や事情があるからだ。

いかがだっただろうか。あなたが「アウティング」について少しでも考える機会になれば幸いだ。

参考:www3.nhk.or.jp

LGBTアウティングセクシュアリティ一橋大学同性愛

Made In Gender編集部 • 2016年8月7日


Previous Post

Next Post