なぜ「女の子はピンク」なの? 色の歴史を紐解く

色による性別の区分けは根深い。我々は生まれてすぐ、女の子であればピンク、男の子ならブルーのおくるみに包まれ、パッと見では性別なんて分からないころから、「それぞれの性別に適した」服やおもちゃを贈られる。
中には性別を感じさせない子供服を展開しているブランドもあるが、仮にベビー服を掻い潜ったとしても、その後の人生の中で「女の子はピンク、男の子はブルー」の呪いはほとんど一生ついて回る。

だが、そもそもこうした色分けは、いつ、誰によって決められたものなのだろう? 今回は全ての色の中で最も性別との結びつきの強いピンクに絞って見ていきたい。

ピンクの発祥

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ピンクは古代から多くの人々に愛されてきた色だ。ただし、古代における「ピンク」は、こんにち我々が想像するものとは異なる、深みを持った、どちらかといえば赤に近い色合いだったようだ。

さて、はっきりとした色合いの衣服が好まれた中世ヨーロッパにおいて、ピンクの衣類はあまり人気がなかったようだ。当時描かれた絵画の中でピンクを纏っている人物は多くない。

例外はイコンなどの宗教画である。描かれた聖母マリアやキリストが、淡いピンクの服に身を包んでいるものがいくつか存在する。

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「薔薇色の頬」という言葉が示すように、ピンクは血色の良さを連想させ、健康的なイメージを持つ。このあたりが、宗教画に好んでピンクが使われた理由かもしれない。

「ピンク」という言葉の登場

今まで散々「ピンク」という言葉を使ってきたが、実際に「ピンク」が市民権を得たのは17世紀のこと。以降、衣服や宗教画以外の絵画にも頻繁に登場するようになる。

ピンクが最も人気となったのは18世紀、ロココ時代。当時のファッションシーンを牽引していたのはかの有名なポンパドゥール夫人。彼女はパステルピンクを好み、よく身につけていたという。

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ロココといえば曲線、過剰な装飾、そして僅かに漂うデカダンス的な気配。こうした空気の中で醸造された「ピンク」のイメージが女性性と結びつけられるのに時間はかからなかったようだ。その後の絵画の中にはピンクの衣類を身につけた女性が数多く登場するようになる。

ところが19世紀に入って、「ピンク」は一旦、男女両方の色へと立ち戻る。安い染料でピンクが作れるようになり、「かわいい色」として、子供服で人気を博したのだ。

当時、ピンク色の子供服は男女両方に着せられていたものの、元々持っていた女性的イメージが勝ったのか、いつの間にかピンクは再び「女の子」の色になってしまった。

ピンク=軽薄でおバカ?

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img:movies.yahoo.co.jp

あなたは、『キューティ・ブロンド』という映画をご存知だろうか? 政治家志望の恋人に振られた主人公が、彼を見返すべく超一流のロースクールに入学し、周囲の軽蔑の眼差しや偏見を跳ね除けながら成長し、自立していくサクセスストーリーである。

タイトルの通り主人公は美しいブロンドヘアの持ち主だが、欧米では金髪は「軽薄で尻軽」であるという偏見を持たれている。そんな彼女の持ち物は、どこまでいってもピンク、ピンク、ピンク……。ブロンドヘアとピンクは「可愛いけれど頭が空っぽな女の子」の代名詞というわけだ。

ピンクは女の子の色だから、そのピンクが好きな女の子は頭が空っぽ。

ここにおいて、ピンクが女性蔑視とある種の結びつきを持ってしまったことは明らかだろう。

色の好みに性差は存在するのか?

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img:gqjapan.jp

一説には、女性がピンクを好むのは熟した果実を連想させ、男性が青を好むのは狩猟に適した青空を連想させるからだとして、そこに生物的・本能的な差があるのだとする声もある。

そちらの真偽のほどは定かではないが、我々の色の好みには多分に置かれた文化的状況が影響していることは自明だ。

現代において、女性は身分にも性別にもとらわれず、好きな色や形の服を着ることができる。ピンクだろうとブルーだろうと、手を伸ばすのにさほど勇気はいらない。

だが、男性がピンクを身につけるのには未だ勇気が必要なのではないだろうか。男性向けのアパレルショップを覗いてみても、まだまだ色彩に乏しいように感じる。

全ての男性が青を手に取るのと同じ気安さでピンクを選択できる、そんな日はいつやってくるのだろうか。

ピンク

Made In Gender編集部 • 2016年7月12日


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