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名探偵シャーロック・ホームズ
「シャーロック・ホームズ」といえば誰もが知る名探偵、19世紀イギリス小説を原作とする『シャーロック・ホームズ』シリーズの主人公である。
シルクハットを被り、肘掛椅子に座ってパイプを燻らせ、次々と難事件を解決――そんな鷲鼻の英国紳士の姿がイメージされるが、彼が被るシルクハットに、ファッション以上の理由があったことはご存知だろうか?
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英国紳士とシルクハット
日本のゲームやアニメにも、シルクハットを被っているキャラクターは多い。
ホームズと同じく探偵の「レイトン教授」に、『猫の恩返し』の「バロン」、『名探偵コナン』の「怪盗キッド」……他にもさまざまなキャラクターが存在する。
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当時のイギリスは階級社会で、王侯貴族など不労所得で生活している上流階級と、医者や弁護士などの専門職からなる中産階級、そして肉体労働を主とする労働者階級から成り立っていた。
このような社会の中で、中上流階級の紳士たちは、自分の階級を示すために、あえて労働に不向きな背の高いシルクハットや手袋、ステッキなどを身に着けていたのだという。
ホームズのシルクハットは単なるファッションではなく、イギリス紳士としてのプライドを象徴しているのだ。
女性の権利と異性装
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当時の女性は男性の――婚前は父親、婚後は夫の所有物であり、身分の高い男性のもとに嫁ぐために生きているといっても過言ではなかった。
ひ弱で頼りなく、男性の助けが無ければ起き上がることすらできないような女性が良しとされていたため、女性たちは実用的な家事などの代わりに、生きていくうえで必須ではないフランス語や刺繍などを嗜んだ。
衣服も女性の自由を制限するもので、内臓の形が変わるほどきつく腹部を締め付けるコルセットや、歩くことも困難なほど大きく広がったスカートがその代表格である。シンプルな服装の紳士たちは、自分の代わりに着飾らせた妻や娘たちを社交界に連れていき、娘の伴侶探しに精を出したのである。
――そんな時代から約150年、当時と比べれば随分自由になったものの、まだまだ服装の性差は根強い。パリで「女性のズボン着用禁止」条例が撤廃されたのも、ほんの数年前の話である。パンツルックの女性が当たり前になるまで150年――スカートスタイルの男性が堂々と街中を歩ける社会は、何年後に実現するだろうか。