学生服「カンコー」の制服展示会で「新たな制服」を考える。

全国で「カンコー学生服」を展開する菅公学生服株式会社が開催する「スクールソリューションフェア2018」。その大阪開催が本日(2017年11月21日)と明日の2日間にわたって、大阪サンライズビルで執り行われている。

「スクールソリューションフェア2018」は、カンコーが行っている教育支援の紹介や制服の展示を主とした展示会で、全国の学校関係者向けに、大阪を含めた全国四ヶ所(東京・大阪・名古屋・福岡)で開催されている。

カンコーが提案する「新しい制服」とは

有名ブランドとのコラボや、生徒たち自身がデザインした制服など、見るべきものは数多くあるが、その中でも注目したいのが、「性的少数者に配慮した」という制服だ。

写真の制服は男女どちらも変わらないデザインになっており、トランスジェンダー(身体の性別と心の性別が異なるひとを指す言葉)の生徒でも抵抗なく着ることができる。

また、展示内容の中には「LGBT対策」と題するコーナーも設けられており、統計結果や、写真のような具体的な提案制服も見ることができる。

ちなみに「LGBT」とは「レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー」の4つの頭文字をとったもの。
それって何? どういうこと? という人は以下の記事を参照して欲しい。

参照:LGBTって何?

課題の残る教育現場と制服事情

性別無関係に着られる制服を導入する動きは、ここ数年、「LGBT」という言葉が普及するにつれて広まりつつある。そうした流れの中で、制服メーカー側が積極的に提案することが当たり前になれば、制服事情は大きく変わってくるかもしれない。

だが、その一方でいくつかの課題も残っている。

第一に、学校現場における「性的少数者」「LGBT」が、「トランスジェンダー」の問題として捉えられてしまい、制服やトイレの対応といった制度変更だけで「LGBTに対応した」と簡単に片付けられてしまう心配だ。

たとえば今回「男女関係なく着られる制服」が「性的少数者への配慮」として取り上げられているが、そのねらいが「心の性別と異なる性別の服装をさせられる苦痛」をなくすためだというのであれば、それは「性的少数者のための」制服ではなく「トランスジェンダーに配慮した」制服である、ということになる。

参照:LGBTって何?

制服やトイレの問題は勿論大切で、早急に解決しなければならない課題だ。けれどその一方で、「L・G・B(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル)」や、それ以外のセクシャリティに当てはまる生徒たちがいることもまた、考慮される必要があるだろう。「我が校は男女関係のない制服を導入し、誰でもトイレを設置したのでLGBTに対応しました。はい、これで完璧です」とはいかないのである。

第二に、LGBTに関わる問題が、「対策」と称され、見つけ出して対応するべき課題とされてしまう危険性だ。

「LGBT対策」という言葉は、厳密に言えば正しいとは言えない。LGBTは策を練って対応しなければならない特別な存在ではなく、当たり前に存在するものだからだ。当たり前のことだが、「我が校にLGBTの生徒がいるかもしれないので、アンケートをとって人数を調べ、対策します」というのでは何の意味もない。

もちろん「LGBT対策」という言葉には、そういった意図は無いだろう。「性的少数者に配慮した制服」の提案というのも、単にそう称するのが分かりやすかっただけなのかもしれない。

制服展示会で、男女無関係に着られる制服が展示される。それ自体は素晴らしいことだ。しかしその一方で、教育現場や、それを取り巻く業界の課題は大きい。

勿論、課題はLGBTを取り巻く問題だけではない。生まれ持った茶髪に対して黒染めを強要する等の事件が話題になる昨今。画一化や個性の抑圧といった「教育」のマイナスイメージの象徴になりうることもある「制服」が、今後どう変わっていくのか見守っていきたい。

制服

Made In Gender編集部 • 2017年11月21日


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